観察から始まるコミュニケーション
DOORでは個人の”アイデンティティ”をとても大切にする文化があります。「個を深く知るためのワークショップ」は、あの人の知らなかった一面や隠された本質を掘り出していこうという企画です。堅苦しいのは苦手なのであくまでゆる〜く、カジュアルな雰囲気を目指します。
この記事に登場する人
科田小太郎
1987 年京都生まれ 京都市の高校を卒業後、 東京ヒコみづのジュエリーカレッジへ入学。その後、アパレル/飲食/ 印刷業など多岐に渡る職業を経験。 2015年より7年間紳士服飾メーカーにてアニメ版権を利用したIP商品の企画立案からデザイン/ 商品管理/ PR/オンラインショップ運営などを行う。現在は今までの経験を活かしアパレルブランド「cravatta by renacnatta」のディレクターと株式会社SASIにて企画経営/戦略総務をおこなう。
話し手:科田小太郎 聞き手:迫田夏幸
タグ:#キャリア #子育て #人間観察 #コミュニケーション
- 上京~出遅れた就活~キャリア成形
- コミュニケーション能力は才能?学習?
- 趣味は探偵
- 子育てから知るアイデンティティー
- ”絡まった紐をほどく”という仕事。
上京~遅すぎた就活~キャリア成形
「仕事」の項目が少ないですね(笑)
そうですね!比較的、真ん中が多いですね!
私の印象では小太郎さんはアパレルを生業とされている印象が強かったのですが、ご自身は”仕事”の項目の1個という認識なんでしょうか?ジュエリー製作、アパレルコーディネーター、アニメ関連グッズ製作、デザインなど全てアパレルに関連する気がしますね。
職歴でいうとアパレル業をしているのが長かったりするんですけど、アパレルは職歴のうちの1個っていう感覚ですね。元々アパレルに興味を持ったきっかけは東京にあるジュエリー関連の専門学校に行ったことが理由で、デザインとか製作をしているうちにファッションにも興味が湧きだしました。
ジュエリーに携わるいうのは元から夢だったんでしょうか?
いや、そういうわけではないんです。元々高校入学する時は高卒で働くつもりだったので、進学するつもりもなかったんです。けど高校の2年生で進路を決める時期に大学や専門学校が一覧になってるカタログを見ていると母校のジュエリー学校を見つけて、めちゃくちゃ面白そうだなと思ったんですね。当時、できれば物作りをする仕事をしたいなと思っていたので親に「就職をするつもりやったけど、ちょっとこの学校気になる。」と相談したら「別に行ってきていいよ。」って言われました(笑)
思ったより返事が軽かったんですね(笑)
そう、「まじですか?!東京ですけど?!」って(笑)やっぱり学校は行ってみると面白かったんです。手のひらに乗るサイズで自分の世界観が表現できることがジュエリーの面白さで、それが楽しくて、熱心に学校通っていました。でも、ジュエリーだけで表現をするというのが学校の方向性だったのですが、僕は途中でジュエリーはファッションの一部だという捉え方をしたいなと思って、18歳くらいからファッションに興味を持ち出したんですね。そこから色々と迷っていたら、卒業目前で就職先が決まっていないという始末(笑)
卒業間際は不安ですね(笑)
そうそう(笑)結局、卒業式の段階まで決まってなくてどうしようかな?って考えた時に、「やっぱりアパレルの仕事をしたいな。」と思って、当時お世話になってた先生が通う古着屋さんがアルバイトの募集をしていたので受けてみたら、採用いただいて。結局、その会社で3年ぐらい働きましたね。
無事に就職が決まって良かったですね!そこからどんなキャリアを経られたんですか?
そのあとは、ずっと地元に戻りたい気持ちがあったので、京都に戻ってしばらく色々な仕事を転々としていたんです。でも、アパレルが面白いっていう思いが残っていて、26歳の時にアパレル業界に再就職。ネクタイのメーカーさんで7年ぐらいアパレルの仕事をしていたので、アパレルに携わる期間は1番、長かったですね。
今お話に挙がったアパレルの2社ではどんなお仕事をされていたんですか?
最初の古着屋さんでは、接客販売から入ったんですが、オリジナルのアクセサリーも販売している会社だったので、ジュエリーの学校の経歴からその企画と店舗管理を2年ぐらい任せていただきました。ネクタイの会社さんは、企画デザインですね。お客さんから「こういうのが欲しいです。」とか、こっちから「こんなのが今いいですよ。」っていう話をしながら、ネクタイの柄をデザインして生産管理をしていました。もう一つ、今SASIとは別でcravatta by renacnatta(クラヴァッタ・バイ・レナクナッタ)というメンズ向けのアパレルブランドでディレクターをしています。
逆算した感覚はないと思うのですが、不思議とキャリアが全て結びついていますね!
図らずして、そうなりましたね。
コミュニケーション能力は才能?学習?
先ほどの古着屋さんにも繋がる“接客業”というキーワードですが、付箋を貼っていただいたシートの仕事とプライベートの欄の間にあるのはどういった理由でしょうか?
接客は仕事ではあるけど、提案するだけじゃなく日常的な会話もするんです。そこでは自分のプライベートの話とか商品と関係のない話題をお客さんと結構するので、勉強になりますね。仕事抜きのプライベートな繋がりにも発展したので、僕の中では接客業は仕事とプライベートの間にあるんです。
なるほど!どちらにも生きるんですね。
似たお話を先日、亮さん(SASIの東良亮さん)からも聞きました!
お、ほんまですか!そうやってどちらにも影響を与えるようになるんですよね。カウンター接客って言っていわゆるお客さんと対面で会話をしながらのお店で働いていたこともあるんですね。そこでは全く料理と関係のない話題になるので、公私混同する部分もありましたね!
普段関わらないような業界の方とお話しできる機会って貴重ですね!
ちなみに、小太郎さんはSASIに入られてから何ヶ月でしたっけ?
2022年の11月入社なんで、1ヶ月ちょっとかな?(2023年1月時点)
まだ1ヶ月ですか!結構皆さん言いますが、小太郎さんは馴染むのが早すぎてずっと前から一緒に働いている感覚になるんですよね(笑)
ありがたい話で色々な方に言われますね(笑)
キャリアの話を聞いていたら、話すことが好きで接客業経験も豊富だから、聞き手と話し手のバランスや距離の保ち方が素晴らしいんだなと思いました!
確かにそこは意識してるかな。なるべく自分のことを隠したり繕ったりしないようにしようと思っています!
人と話す、関わるということが小太郎さんの中で一番大きい要素だなと感じています。
気づいたら人とコミュニケーションをとるのが楽しいって感じているんですよね。どちらかというと自分は聞き手だと思っていて、その人に興味があって、自分の知らない話を聞くんです。その人の抱えている問題を聞くだけでもいいし、何か自分の持っている知識で助けになれるならめちゃくちゃいいなって思っています。
なるほど。人と話すことそれ自体が小太郎さんのアイデンティティの形成につながっているんですね!
うんうん。仕事の話もだし、恋愛の話もかな(笑)若いころから結婚した時や子供ができた時の苦労話を、いっぱい聞けたのでそういう部分でも人と話すことって、めちゃめちゃ勉強になるから面白いですね。
聞き手側の自覚ありとのことでしたが、今日は話し手側ですね(笑)普段話していないこと話しちゃってください!
趣味は探偵。
以前、何かを選択する時は「カウンターカルチャーなものを選ぶ傾向がある。」とおっしゃっていましたよね。それってカルチャーを知っていないと、カウンターできないですよね。
確かに!それはそうですね!
カウンターカルチャーって、今あるものに対する否定だと考えると既にあるものが何なのかをちゃんとわかっていないとダメなんでしょうね。
うんうん。きっとその“既存のものを観察する力“がすごいんじゃないかなと。
そうなんですかね!あんまり人と比べたことがないので実感ないです(笑)
でも“人間観察”をキーワードに持ってきているところにも表れていませんか?(笑)
確かに(笑)この“人間観察”は何か目的があるというよりも、癖みたいなものですね。イメージでいうと、ちょっと探偵さんに近くて、例えば人が持ってる喋り方とか所作で、ある程度、職業とか人柄がわかったり…ってすると思うんですよね?
いや、誰もができることじゃないですよ!(笑)
そうなんですかね!(笑)でもね、僕はそういうのを想像しながら人を見るのが好きなんですよ。「あ、この人はこういう性格なのかな。」とか、もっと簡単に言えば、身なりでその人の音楽の趣味がわかったりとかね。そういうニュアンスですね。まだ会話をしていない人について同じように想像している場合、その人と喋った時に想像と本人の間にギャップがあったら、それはそれで面白いんです。
答え合わせをしながら話していくんですね!
そうそう!自分が魅力的だなって思う人を見て「じゃあ、この人のルーツってなんなんだ。」「この人のこの行動って、どこから来ているんだろう。」っていうのを話して確認してすり合わせをするんです。
なるほど!話していたら全部考えてることとか癖とか見透かされていそうやなあ(笑)
そうですよね。ただ、こういうことを言うと喋りづらくなっちゃいますよね(笑)
いやいや、大丈夫ですよ!逆に日常の行動に対して気を引き締めます!
あの、今後も皆さん気にせず来てください、気にしないでください!…って言っても難しいですよね(笑)
確かに(笑)でも、内面まで観察できる小太郎さんと話すことで自分についての新しい発見がありそうです!
子育てから知るアイデンティティー
そういえば奥さんと娘さんとSASIのクリスマス会に来られていた時に、ご家庭でもこんな感じの温かい空気なんだろうなって感じました!
空気はほぼあのまんまですね。あれにたまーにピリつくぐらいです(笑)
ピリつくのってどんなときですか?教育観が食い違ったりするのも難しい子育ての難しいところなのかなと思ったり。
あーそうですねー。教育観は合うところもあるし、食い違うこともあります。でも必ず話し合うようにはしています。どうしても譲れないところは譲らないけど、ある程度向こうに合わせるようにしているかな。子育てはバランスが難しいですね!
確かに、真正面から話して家族でどうにかしないといけないですもんね!
そうですね。なんかね、子供見てたら親の方に合わせているような時があって、「子供の方が器用にやってるなあ。」って思うんです。良いのか悪いのか(笑)
確かに、子供ながらに意外と察して行動していますよね(笑)娘さんの成長を観察するのも楽しいですね!
一番の楽しみですね(笑)
子供と大人で1年の感覚がまるで違いますよね。
成長スピードが速すぎて悔しくなりますもん(笑)生まれてから、言葉を話して自我を持ち始めて、それを表現し始めたりするのを見ていると、恐ろしい成長スピードだなと思って。どうやってもそのスピードには敵わないけど、大人になってどんどん鈍化してきてるから悔しいなって思います(笑)
確かに、私もちょうど20歳超えて鈍化を実感しているところです(笑)娘さんに関してはこれからもっと面白いと思えることが増えそうですね!
本人がどういう風に生きていくのか、とても楽しみですね!
ちなみに、もし娘さんが「ジュエリーの学校行きたい!」って急に言い出したらどうしますか?(笑)
いやあ、「ええんちゃう。」とは言うでしょうけど、どうだろ(笑)
それでいうと、僕の母親も東京の服飾の学校に行っていたんですよ。そのあとも服飾の仕事をしていたけど、僕がジュエリーの学校に行くまでそのこと一言も言わなかったんです。後で聞いたら“あえて“黙っていたらしいです(笑)知ってしまったらいろんな部分で意識してしまうだろうから、自分で選択をしてほしいという思いがあったらしいです。
そんな後日談が…!自分が親になっても同じように言わないでおきますか?(笑)
言わないでしょうね(笑)
そうすると子育ての仕方って、自分の親も関係してきますよね。
そうですね。子育てをすると、やっぱりお手本が欲しくなるじゃないですか。一番近いお手本って自分が受けた教育なので、親のこともめっちゃ意識するようになりましたね。
なるほど。それは自分が子供の時のことを思い出すんですか?
「何を教えられてたかな?」とか「何大事にしてたんだろう?」とか、記憶を辿ります。わが子は、僕の親からすると孫なので甘々ですけどね(笑)でもそれを見ると、孫に見せている姿が本当の人柄で、僕に対しては親の顔をしていたんだなとも思います。
予期せぬ形で親御さんの素が見えるのって嬉しいですね!
娘さんと遊んでいる時間って多いですか?
多いのかな?うーん、自分の中では多いなと思いますね。土日は基本遊んでるし、一緒におままごととか、お絵描きとか、外遊びに行ったりとかって、全力で遊ぶようにはしてますね!
そうなんですね!それは、もはやオフがない感じですね。仕事でオフなら家庭でオンになるみたいな(笑)
そうそう(笑)“HIPHOP”とか“踊ること”とか“コーヒーを飲む時間”をオフとするならば、他はオンです(笑)
とすると、自分の時間ってやっぱり一呼吸置くには必要な時間ですね!
“絡まった紐をほどく“という仕事。
付箋にある“モノゴトを整理する”について教えてください
僕にとって整理することは癖でしょうね!(笑)仕事でもプライベートでも、“絡まった紐をほどく”みたいなことが好きですね。多分変な使命感があるんだと思います(笑)
わだかまりや何か引っかかるところがあったときに自ら気づいて自分がほどくみたいなことなんでしょうか?
そうですね。そこに多分面白さというか、楽しさみたいなものを感じてるのはすごいある。絡まった紐ってめんどくさいし、時間がない時ってハサミで切ればすぐに解決する!分裂はするけど(笑)でも時間をかければ絶対に綺麗にほどけるものでもあるな、と思うんですね。だから、その面倒をいかにやるかみたいなのを考えています。
あーなるほど、その考え方、めっちゃ素敵ですね。
確かに、ハサミで切ってしまう人の方が多いなっていう感覚はあるので、「そこまで根(コン)を詰めなくてもいいやん!」みたいに周りから思われるかもしれないけど、それをいかに水面下で自分でやるかって考えてくれている人がいると組織ってうまく回るんだろうなと思いました。
ちゃんとほどけば、繋がった状態で元に戻るんです。人間関係にも言えるだろうし、物事でも同じ。
それって、いつからそういう考え方なんですか?その特徴を逆にコンプレックスに捉えていた時もあったんじゃないかなと思って。
あー、いつからでしょうね。でも、こうやって言葉にし始めたのは、多分つい最近だと思います。10代後半にはもうこういう考え方があったかもしれない。
部活とかでですか?
そうそうそう!あー色々と思い出してきた(笑)確かにコンプレックスになってたかもなー。これ、話し出すと自分の人格が露わになりますね。かなり根っこのコンプレックスなんでね(笑)
そうなんですか!?聞いてみたいです(笑)
次回の楽しみにしませんか?(笑)
気になるなあ〜!でも次回じっくり話していただきましょう!
じっくりコンプレックスと向き合うとしますか!(笑)