公と私の媒介は“自然と戯れること” | DOOR-MAGAZINE 公と私の媒介は“自然と戯れること” | DOOR-MAGAZINE

公と私の媒介は“自然と戯れること”

 

DOORでは個人の”アイデンティティ”をとても大切にする文化があります。「個を深く知るためのワークショップ」は、あの人の知らなかった一面や隠された本質を掘り出していこうという企画です。堅苦しいのは苦手なのであくまでゆる〜く、カジュアルな雰囲気を目指します。

この記事に登場する人

野々大樹

スマート農業分野のスタートアップにて見込み顧客獲得のためのマーケティング施策を企画から実行まで担当。 前職ではデジタルマーケティング代理店にマーケターとして所属しており、飲食業界、不動産業界、医療美容、建設業界などのマーケティングプロジェクトで顧客窓口をしながらチームをマネジメントしながら案件進行。

話し手:野々大樹 聞き手:迫田夏幸

キーワード:地方創生、自然、デジタルマーケティング、フリーランス

野々大樹の「できること」「楽しいこと」「好きなこと」
    1. 海と仕事ー168時間のレイアウトー
    2. 成果だけじゃ足りない、仕事は結局会話の感触
    3. 1番グッドなフォロワーであるために
    4. 辿り着いたフリーランスという生き方
    5. SASIで自然と共生する世界を実現
    6. マーケター流、健全な心の保ち方

今回はSASIでは主にデジタルマーケターとしてご活躍されている大樹さんにお話をお伺いします。楽しみにしておりました!お住まいが福岡とのことで、未だ1対1の対面でお話しするチャンスがなかったんですよね。

ないですね〜。普段あまり自分のことを話すタイプではないんですけど、僕も楽しみです。

海と仕事ー168時間のレイアウトー

自然や海に関するワードがプライベートを占めている印象を受けます。大樹さんにとって重要なアイデンティティの部分かなと思うのですが?

そうですね。ウィンドサーフィン、ウイングフォイル(手で風を受ける翼を持ち、足元で水中翼をもつボートを使って波に乗るスポーツ)など”海あそび”が元々好きです。亮さん(SASIの東良亮さん)もウィンドサーフィンやっていますよね。

以前、“個を知るワークショップ”の亮さんの回でちらっと聞きました。

僕は元々、大学でヨットをやっていたんです。社会人になって東京に出てから、個人でもやりやすいウィンドサーフィンに切り替えました。今は、ウイングフォイルにハマり始めています。

このスポーツは初めて知りました。絶対難しいだろうなあ。でも、できたらめっちゃ面白そうですね。

めちゃくちゃ面白いですよ!うまくなったら飛んだり。カーボンでできた板の下に飛行機みたいなものがついていて、自分の手で羽を持つんです。それが加速して風を受けたら浮くんですよ!

ヨット、サーフィンと来て、さらに飛びたくなっちゃったんですね。爽快感が半端じゃなさそうです。

今はちょっと寒いから、あんま行く気せんくて行ってないんですけど(笑)3月くらいから再開できるかなと思っています。

海での趣味のために遠出はするんですか?

いや、家の近所でできるんですよ。日によって風の吹く吹かないがあるんですけど、福岡はぐるっといろんな向きの海岸があるのが特徴で。海遊びのコミュニティーで「週末こっちの風がイイから、集まりましょう!」って感じで集合します。

そこのコミュニティーの人たちは全く仕事とは関係ないんですか?

そうですね。たまにお互いの仕事の話をすることもありますけど。ウィンドサーフィンは時間とお金がちょっとかかるので年齢層が上なんです。平日に働いて、お子さんも大きくなられて、土日に海にいくスケジュールですね。一方で僕は小さい子供がいて、土日はなかなか誘われても行きづらいので個人的には平日に行きたいって思うことが多いですね。
実は、それがフリーランスになった1番の理由でもあったり(笑)

へえ!家族との時間を確保しながら、自分の好きな時間で趣味を大事にするための独立ってすごく良いですね。

もちろん、仕事上の理由も働き方の理想もあって色々複雑ですけど、1番のきっかけはそれです。天気次第で「今週は火曜日の午後だけ行こうかな。」とかができますからね。しかも、その分の仕事を土日とか子供と遊ばない朝夕に持って来たりっていう調整もしやすい。働き方をちょっとチェンジしたみたいな。

ということは、最近までのフリーランスじゃない時の働き方に後悔があったんでしょうか?

後悔は特にないですし、それが当たり前やと思ってたんですけど、「平日土日にそんなきっぱり分けんでもいいんちゃうかな。」と思い始めて。

時間の使い方を考え直すきっかけがあったんですか?

新卒から当たり前のように平日に働いてきて、SASIに副業で1〜2年ぐらい関わりながら、「これもしかしたら独立したら、もうちょっと自分でコントロールしながら仕事とプライベートを“レイアウト”できるんじゃないか。」と思ったんです。バランスじゃなくて、“レイアウト”。

なるほど。大樹さんの時間軸の捉え方って、どちらに比重を置くかっていう“バランス”ではなく、月から日の168時間をどう使うか切り貼りしていく“レイアウト”なんですね!

そうです!なぜかというと、気持ちよく自分の好きなことをやるのが人生において大事だと思っていて。会社の勤めをちゃんと果たして、家族の方もピリピリしたくない。例えば、妻が子どもを見ている時間が長いんですけど、「土日やっとちょっと気が抜ける。」って思ったら、夫は海に行ってしまうみたいなことは避けたくて。そんな日もあっていいと思うけど、交渉して土日を得るのは嫌だなあーって思って。

確かに、別にどっちが大事だとかいうわけではないですもんね。

そうそう。そういう理想の状態にするためには、仲間にタスクを振って、自分の手を空けたるのもひとつ。あと僕の妻はライターをしていたので、一緒に家事と仕事のバランスをとれたらいいなと思っています。

今度は“バランス”ですね。大樹さんの丁寧な言葉の使い方が表れている(笑)

ほんとですね(笑)そういう意味でも、結構人に比べたら仕事とプライベートは分かれていますね。分けて時間使ってますね。

キーワードも仕事とプライベートではっきり分かれていますが、時間の使い方による区別だったんですね。

でもあのー、妄想することはありますよ。「自分で何か作ってECサイトやろかな〜。」とかって。でも、何かきっかけがあれば自分の好きなことを仕事に結びつけたいくらいの感じです。ちょっとずつ将来的には寄せていきたいんですけど、今のところ具体的な構想はないですね。

成果だけじゃ足りない、仕事は結局会話の感触

マーケティングと一口で言っても色々領域があると思うのですが、現在主に何をされていらっしゃるんですか?

わかりやすいところで言うと、Instagramの広告。他には、Google検索をしたら出てくるような広告を作って運用するとか。もうちょっと大きなところで言うと、クライアントさんだったりSASIそのものが、安定的にお客さんを得るための仕組みを作ってる感じですね。やっていることとしては、サイト作りのディレクションも、広告の運用とか企画もですね。

短期的な広告から長期的な広報全体まで扱っていらっしゃるんですね。キーワードにもある“数字を見ること”は得意分野になるんですか?

んー、そんな得意じゃないですね。マーケティングの世界にいると、すごく得意な人がいっぱいいるじゃないですか。だから得意意識は持っていないですけど、やっぱ好きは好きなんです。根っこにあるのは、ここまで話してきたように仕事とプライベートを結構分けてるのもあって、「仕事は突き詰めてやるもんだ。」っていう認識があるからだと思います。

“突き詰める”の観点を聞きたいです。

僕は新卒から営業マンで、アポイントのとれた会社に端から端まで、出向いていくみたいなことをしていたんです。だから仕事といえば、数字になるもの、売り上げに繋がるものって割り切っていたところがあるし、その後マーケティングとか色々手を広げる中でも、「形になるものをちゃんと残せるものにならねば!」って思い続けているんですね。やるならちゃんと結果を出す方が、分かりやすいし、自分のキャリアの指針としてもシンプルでいいなって思って、ずっとやってきたんです。

今の話を聞いていると、割と個人プレーというか、過程より結果にこだわるという仕事のスタイルが感じられたのですが、一方で“チームワーク”がキーワードに挙がっているのはどうしてですか?

そうですね。結構長い間、数字を見たり、ちゃんと成果に繋がる仕事を残すことだけを大事にしてきたんです。でも、ここ1〜2年で色々働き方を考え直して、新しい決断をする時に気づいたことがあって。結局、日々寝る時に幸せを感じられているかとか?スッキリ起きているかって?大切なのは「ポジティブなコミュニケーションが生まれたかどうか。」なんです。確かに数字は1つの拠り所なんです。ビジネスなのでちゃんと積み上げないと、みんなが幸せにならないので数字は大事なんです。でも結局、僕が幸せを感じる行動、喜びを感じる行動は、こういうインタビューでコミュニケーションがちゃんとできたかどうかとか。他にも、会議したときの感触とか、ポジティブなチャットとかもですね。

その感覚とても共感します。人と関わっていて「気持ちがいいな。」っていう瞬間があった日って、帰り道で思い返します。次に続く仕事のモチベーションが保てたりもしますよね。

そうそう。逆のケースだと、コミュニケーションがうまくいかず、厳しいフィードバックを受けることとかね。仕事の中で小さな期待みたいなものを裏切ることになって、「誠意を持った仕事ができなかったな。」って思ってしまう瞬間とかもあるじゃないですか。そういう時に、どれだけ結果を残せても、毎日の細かなやり取りを大事にしていないと幸せを感じられないんですよね。

確かに。私も軽音サークルで、本番良かったけど練習が楽しくないライブより、練習も本番も楽しくてうまく行ったライブの方が圧倒的に達成感ありました(笑)本番までのコミュニケーションって実は本番のクオリティに繋がっていたんでしょうね。

確かに、結果的にそうなっているかもしれないですね。“チームワーク”って書きましたが、“いかに人と働くか”を大事にしたいと最近思っているっていうニュアンスです。もちろん今まで数字ばかりを見て、こういうことを邪険にしていたわけではないですけどね。だから、家族が嫌な顔している時に、海に行きたくないのとかも一緒なんです(笑)数字数字ってよく言うけど、結局みんなが気持ち良くやれているかが大事。なんていうんでしょうね、グルーヴ感というか。

場の空気感みたいなことですね。

そう、場の空気。リモートでも、チームがありますよね。その中で僕が事業の歯車として稼働しつつも、チームの一員としてお互いに信頼関係がある。その状態になってるかどうかが大事。そのためには、やっぱり仕事をちゃんと1個1個積み上げる必要もあるんです。まあ、チームワークっていう表現は違うかもしれない(笑)でも、人との関わり合いの中で、結局満足感を得てるなって思うんですよね。

1番グッドなフォロワーであるために

仕事の中身によって、人との関わりの重要さが変わることもありますか?

僕の仕事は全て、何かを売るための仕組みを事業に残すことだから、もう全部チームプレーですね。だから変わらないっていうのが答えになるんですけど。特にSASIの仕事は中小企業だったり、小さなチームで進めることも多くて、僕がメインでやるウェブマーケ、デジタルマーケに対して基本的には疎い人が多い。だけど、僕だけ暴走しても商品は売れるないんです。クライアントさんがちゃんと自分のものとして捉えてもらえるマーケティングがしたいんです。

なるほど。チームプレーが前提の仕事だからこその気づきだったかもしれないですね。

極論、良い仕事って、“僕がずっといなきゃいけない”っていう状態じゃないですよね。相手に渡していけるものを残すのが1番いいんです。これこそチームプレイなんですよ。僕がディレクションしていようが、末端で動いていようが、残るものを作らなきゃならない。これは、クライアントワークにしろ、勤めていたとしても一緒。僕もいっぱい転職している組ですけど、「残していければ、それでいい。」って思っている。仕組みを残していけたり、僕の作ったチームが人が入れ替わりながらずっとあるとか。

「渡さずに、自分が関わり続けたい。」って思う人も多いわけじゃないですか。以前そういう考え方だったこともありますか?

そうね、そう思ってました。
でも、僕は仕事好きですけど、職人としてやっているんです。プライベートはプライベートで自然のこととかが好き。仕事は仕事でちゃんと突き詰めましょうっていう感じ。だから仕事に関するこだわりがあんまりないんですよ(笑)でも難しいんですよね。ものすごく外部的に働いてしまうとそれはそれで良くないから。だとしても、いついなくなってもいい状態を目指して働くのが本当は健康的だと思う。

それは私も働く上で心に留めておきたいなと思いました。ちなみに、例外ってあるんですか?

社長とか起業家とかは、したいっていうものがあって、それを成し遂げるために事業している。彼らはいついなくなっても良いわけじゃないですよね。
僕はスタートアップ業界から社会に出ていて、卒業生がどんどん起業するような会社にいたんです。

そうだったんですね。学生時代スタートアップに興味があったんですか?

いや、元々の関心はそこまでなかったんです。そもそも僕は、プライベート欄にあるキーワードでできたような人だったので。そこに仕事の欄のキーワードが加わった感じ。
大学時代は、シジミの研究をしていたんですよ。でもそのままの道だと、国立公園のレンジャーとか、研究者とか、公共機関の水産試験場の職員とかになるのがわかってて。それはちょっと退屈そうやなって思ってしまって、就活を始めたんです。当時あまり社会を知らないまま、就活時期が早いIT業界とか、スタートアップ業界を見たんです。そしたら、かっこ良くて面白そうで、なにより働いている人が退屈してなさそうだと感じて、「こっちを1回やってみよう。」って思って入社しました。でも5年くらい働いてやっと、僕がやりたいっていう種はそこになかったことに気づいたんです。当時「なんで自分の周りの人達はこんなにも頑張れるんだろう?」って疑問を持ってて。結局、スキルじゃなくて、稼ぎたいとか、成し遂げたいとか、起業したいとかの強い意思を持っていることがわかったんです。

仕事における野心みたいなものですね。

そうそう。僕、別に野心とかなかったんで、そこが決定的な差だなっていうのを感じましたね。ただ、9割の人は職業人生の中で、サポートする側なんです。

そういうことか。「渡さずに、自分が関わり続けたい。」っていう考え方をやめたのが、「自分含めほとんどの人がフォロワーだ。」に気づいた時だったんですね!

そういうことです!もちろん入れ替わることもあると思うんですけどね。フォロワーたるもの1番グッドなフォロワーであるためには、“自分じゃなくても”っていう考え方が要るんです。だから、クライアントさんにも自分たちで回せるようにしてもらっています。広告の仕組みとかも作ってしまえば、回すことにスキルはいらないからね。特に、SASIの伴走型の支援は自分たちがずっと抱えていくようなやり方だと立ち行かないと思う。

辿り着いたフリーランスという生き方

この“自分じゃなくても”っていう考え方は自分への言い訳でもあるんです。
僕は今まで3年ずつぐらいで転職してきたんです。孝夫さん(SASIの吉松孝夫さん)とか亮さんに聞いたらわかるんですけど、僕みたいなペースで転職してる人って転職エージェントから見たら、「転職しすぎ。」って言われるんですよ。でも、事業にもよりますけど、2〜3年あればなにか形にはなるんです。チームもできるし、売り上げの仕組みもできるし。じゃあその次のステージに行きたいかどうかっていうところで転職が出てくるんですよね。例えばマネージャーから執行役員になりたいかみたいな話です。

その会社で上り詰めるかどうかの判断って、一旦3年くらいでやってくるわけですね。

そう。僕の場合、一つの事業やステージをクリアするのにちょっとでも貢献できて、仕組みが回ってチームもあって自分がそれをしなくなっても別に良くないですかっていうのは、自分への言い訳ではあります(笑)結果的にこういう考え方になったんですけど、きっと今後もずっとそうだと思うし、プロジェクトごとに区切っていくみたいな考え方をしちゃうんだろうなと思っています。そういう意味でもフリーランスの形で、素敵な方々の支援をしていく方が合ってるなって思う。

うんうん。フリーランスなら辞める気まずさもないですし、一歩引いて考えられますよね。

そうなんです。例えば、SASIを僕が離れることがあったとしても、「また、いつか一緒にやりましょう。」とか、代わりに僕の後輩を紹介することもできるし。しかもずっと友達でいられる。会社勤めの場合も友達でいられるんですけど、軌道に乗って同じことを頑張り続けることになって次が見えたら嫌だってなっちゃうので、やっぱり勢いに乗っている時に辞めることになるんですよね(笑)

先が見えすぎても面白くないんですね(笑)でもそういう心の変化って大樹さん自身も入社時にはわからないことですもんね。

そうそう。入る時は「この会社でこれをやり切る!」って言語化していない状態じゃないですか。そりゃあ、会社からは5年10年おるかなって思われちゃうんで、フリー契約の関係で仕事した方がフェアだなと。社員として守ってもらいながら2年で辞めるとか、こっちが裏切ってる感じがする(笑)そうではなく、僕の仕事がしょぼかったら契約を切られる、逆に頑張ったら長く続く関係が良いんですよ。

冒頭に、土日の使い方なんて奥さんに交渉するものではない、という話がありましたが、それと通ずるものを感じました。誰とも気持ち悪い関係性でありたくないし、切るなら切るでスパンと。何においても、罪悪感なしにお互い気持ちいい状態でいるっていうのが1番、大樹さんにとって良い環境なんやろうなと思いました。

確かにそうですね。今日のインタビューで初めて認識しました(笑)
自分への気づきがあるのがこのインタビューのいいところですね。

よかった。大樹さんの芯になっている部分に気づけたみたいですね!

SASIで自然と共生する世界を実現

より良いサポート側の人間でありたいという姿勢に気づきながらも、現在の仕事としてキーワードにもある“スタートアップ”“事業をつくる”に戻ってきているのはどういった理由ですか?

事業は自分で作ってないんですけど、いくらカオスであろうと、出来上がってる場に居たいんです。最初にスタートアップ業界にいたから、癖やと思いますけど、やっぱりただただ回している場には入りたくないんですよね。「目標と目指す方法だけはあります。」っていう組織と「固定のことをずっとやってください。」っていう組織の2つで自分が関わる方を選択するなら、後者寄りになる。僕の仕事は前者を後者にすることだと思っているし。

なるほど。事業を作るところに飲み込まれる方に魅力を感じるんですね。
いかにカオスの状態からカオスじゃない状態に自分が持ってくかっていうところに仕事の面白さを見出していらっしゃる。

カオスを整えたら、そのあとは僕以外の人でもできますよね。でも事業ってそういう側面があって、“両利きの経営(既存事業を深める“知の深化”と新規事業を展開する“知の探索”を両立させた経営)”っていう考え方があるじゃないですか。今のものも伸ばしつつ、新しいことにもチャレンジするっていう。それが同じ会社でできたら僕は長く働けていたと思うし、僕自身がめちゃくちゃ優秀やったら辛抱強く働いていたんだと思うんです。でもそこまでの堪え性がないから、ある程度形になったら次に行くのを繰り返しているし、僕はもうそれを肯定していくしかないなって思ってる。

「自分はこういうやり方で仕事をしていく。」ってコンプレックスを含めて割り切って出来る方は最強だと思うんです。自分はまだ自己嫌悪で止まってしまっていますが(笑)

僕も、「時には転職しすぎなのかな、ダメなんじゃないかな。」って思うこともあるにはある。でも、形になったら続けるのが嫌になっちゃうみたいなところって、別にもう反省したり、変えないとって思うことじゃないんだろうなって思うんです。それよりは、自分の性格に合わせたキャリアを設計していくべきなんじゃないかなって今は思っています。人によってはね、辞めないほうが良いって思うだろうし、一般的に企業は長く働いてほしいって考えるのが普通なので、今のフリーランスって立ち位置の方が自分の働き方にはフィットしています。

それを聞いて、全てにおいて短期戦なのかと思いきや、プライベートは飽き性っていう感じじゃなさそうだなと感じているのですが?

それはそうなんですよね、不思議と。幼い頃から魚とか鳥を見るのが好きで、
「昆虫博士になりたい!」って小学校の時に思ってそのまま大学まで行ったんです(笑)

まさに脇目も振らずですね。先ほどの長く勤めるのが向かないっていう話を聞いたあとだと、2つ人格があるみたいです。

仕事を気持ち良くできないと、やっぱりプライベートは輝かないのでね。かといって、プライベートのための仕事っていう感覚でもないですよ。8割の時間を仕事に費やしているわけですから、プライベートのためだけに仕事してると思ったら、寂しいですね(笑)仕事は仕事の楽しみがあるわけで、自分なりに働いてきましたし。でもやっぱり欠かせないのはプライベートの方だし、自分を語る時に50%はプライベートのことを話したいです。

大樹さんのアイデンティティに迫ろうと思ったら、プライベートな部分に触れないと成立しませんね。

僕の好きなことは、波とか自然と戯れることだし、ランニングで追い込むことだし、自然と人がいかに共生していくのかという問いを考えることなので、最終的にはそういうものが仕事になればいいなとは思っています。例えば、里山を保全するとか。

新卒時には周りは持っていたけど自分にはなかった“野心的なもの”がちらつき始めていますね。

地方創生について考えるたびに思うんですが、地方のアイデンティティって突き詰めたら自然なんですよ。その土地の森とか山の恵みとかに始まり、神様にまつわる考え方から文化が生まれて、独自の産業が生まれて、会社が築かれて、SASIはそういう会社の支援をしていて。地方を飲みこもうとしているグローバリズムだったり画一的な価値観を防いで、自然と共にある動きをもっと作っていくには、地元のプレイヤーが強かったり、地元の文化が愛されていたり、地元の自然がちゃんと活用され続けていることが重要なんです。そして、開発して観光資源にするとかではなく、脈々と続く自然がないと成り立たない産業が存在すること。さらに、それに依存した経済が地元にちゃんとあることが大事なんです。中央集権じゃなくて、各地域がそれぞれに個性を発揮できる経済圏を作ることは、山を管理しなかったり、海をむやみに埋め立てたり、変な構造物を作ったりとかしないことにも繋がると思っています。自分が仕事として携わるにはまだまだ遠いけどね(笑)

いや、言語化している時点で、もう“遠い”とは思わないです。
今回の記事が何か次の仕事のフックになる可能性だってありますし、今のお話が今回のインタビューで一番熱がこもっていた気がしています。

そういう意味では、SASIって本来資源とかお金が集まらないところを盛り上げようとしているので、近い流れのことができるんですよね。ぼーっとしていたら、資源やお金や人って、東京とか大企業に集約されていくんです。そうすると、地方からは人がいなくなって、自然も荒廃していくんです。そういう仕事を実はもっとSASIでしたいです(笑)今は、別にアイデアもないけど。

めっちゃいいですね。「ビジネスになり得ない。」といわれる領域をビジネスにしていくことって当事者意識のある人しかできないと思うんです。そして、次に開拓していきたい未来を見ているのは単純にワクワクしますね。

だから、SASIにいることがすごく僕は嬉しい。SASIがやろうとしていることと、僕が住みたい世界っていうのは、結構即しているんです。

マーケター流、健全な心の保ち方

“車の運転”だけが仕事とプライベートにまたがっている理由を聞きたいです。

そうですね。運転、好きなんです。農業系のスタートアップでの仕事で、九州にスマート農業の機械を売って回っていたことがあって。その時、全部車移動だったんですけど、運転しながら、福岡、佐賀、宮崎、沖縄とかで、地方の景色を見たり、美味しいものを食べながら仕事ができたのがすごく楽しかった。運転中って、何もできないじゃないですか。

確かに。あらゆる感覚全部運転に使いますもんね、“ながら”ができない。

スマホもできないしね。せいぜい、音楽かラジオを聞くくらいしかできない。そんな時間、この世の中、どれだけ貴重か。だから、車の運転は結構考え事が捗るんです。普段本読んだりスマホ見たりって詰めたがるじゃないですか(笑)特に2〜3時間の運転って、結構かけがえのない時間ですね。

確かに。そういった運転する時間は「積極的に作ろう。」と思って作ってる時間なんですか?

仕事を詰め込みすぎていて、最近減っているんです。

良くないですね(笑)精神的な新陳代謝が悪い状態。

そうそう、良くない。ぼーっと運転するっていう何もない時間があるからこそ整理できるものがあります。運転します?

週1とかですけど、仰っていることすごいわかります。特に誰も乗ってない自分1人の時とかめっちゃ好きです。歌ったりもできるし、車の中って家よりも1人になれる。

その点、お風呂もそれと一緒で、何か持ち込んだりもできない。スマホがあってしまうと、ChatWorkとかSlackとか仕事のものを含め、何かを見ちゃうので。駅とかでも本もスマホも見ていなかったら、手持ち無沙汰な人に見えるし。

この前、電車でみんなどれくらい見てるんかなって周り見渡した時、9割9分の人がスマホ見ていました。

そうですよね、だから「詰め込まんとこ。」って思うんです。でも僕、デジタルマーケティングが仕事なので、要はみんなが詰め込んでいる中に広告を挟んでいって、何かを買ってもらうっていうことをしているんです(笑)注意を奪われると、自分にどんどん主導権がなくなって、思考自体も影響を受けて、価値観とかも植え付けられる。そう思うだけに、やっぱり自分自身はコントロールしないといけないっていう気持ちはあります。

自戒も込めている、と。そういった情報からフリーな時間が大樹さんの仕事とプライベートでの健全さを保っているのかも知れないですね。