念願の「トライやる・ウィーク」実施を通じて感じた学生のポテンシャル
9月15日・16日の二日間にわたって、bookcafeDOOR宝塚にて「トライやる・ウィーク」を行いました。職場体験として中学生3名を迎え、デザインについての話やワークショップを行ってもらいました。 今回は「トライやる・ウィーク」を行うに至ったきっかけや、実際に行った内容などについて、株式会社SASIの代表である近藤清人さんに話を伺いました。
身近にない職業に触れる機会になれば
ーー「トライやる・ウィーク」という取り組みで今回学生の方に来てもらってたと思うんですが、期間としては何日くらいされてたんでしょうか。
近藤:2日間やね。「トライやる・ウィーク」は本来は5日間の制度なんだけど、コロナの影響で2日間で2時間ずつに今はなってて、9月15日と16日にやりました。「トライやる・ウィーク」自体は3年前くらいからやりたいと思っててやりますって言ってたんやけど、その直後にコロナが流行り始めて、そこから2年間はできなかったんよ。それで3年目の今回でようやくできたって感じやね。
ーー「トライやる・ウィーク」という制度をあまり知らなかったんですが、会社側から申し込む制度になってるんですね。
近藤:そうですね。やりたいと前から思ってて、それを教育委員会に伝えて申し込みました。
ーーなるほど、ありがとうございます。そもそもの話なんですが、なぜ申し込もうと思われたのかお聞きしてよろしいでしょうか。
近藤:DOORをやってる1つの理由でもあるんだけど、デザインとかプロジェクトとかそういったものに普通は触れないやんか。例えば子供の頃だったり、普段の生活の中でデザインしている人を真横で見る機会はないと思うんよ。僕もなかったから。だからそういうものをもっと知れたらいいよねと思って。DOORの1つの意味合いは、普通にお客さんが入ってこれて、その横で隣でデザインしてるとか、隣で何か企画を考えてるとかっていうようなことを開いた状態にしときたいっていう思いが元々あんねんね。それと同じで、例えば子供の頃に夢を見るわけじゃない?それがケーキ屋さんやパン屋さんとか身の回りで触れられるものだったら「こういう仕事なんだ」って思ってなりたいっていう人もいると思うし、ただそうじゃなくて身近にない職業もたくさんあるから、そういったものに触れる機会になれたらなと思って。例えば今回中学2年生の女性3人が来てくれたけど、僕たちの仕事に触れて「デザインって面白いな」とか、「デザインやってる人ってこんな人たちなんだ」とか思ってくれたらいいなと思いましたね。それがたまたま何年かコロナでできなかったけど、今回やっとできたっていう感じやね。
あと自分の子供の頃を考えた時に、自分がもう少し早くデザインに触れていたらもっとデザインを勉強していたかもしれないなと思って。触れてなくても結果的にデザイナーになったはなったけど、でもそういうきっかけになればいいなという思いはありました。
今の中学生の優秀さに驚かされた二日間
ーーありがとうございます。次にもう少し内容の方に入っていければと思うんですが、来てくれた3人の学生は会社や業種の一覧を見て「ここに行きたい」って選んでくれたってことでしょうか?
近藤:詳しくは聞いてないけど、業種で何業に行きたいですか?みたいな流れでSASIに来たっていう感じみたいやね。それで美術部だったり絵が好きとか、そういう3人が来てくれました。
ーーちゃんとデザインに興味ある学生たちが来てくれてたんですね。期間は2日で2時間ずつということで結構短かったと思うんですけど、具体的にどんなことをやったのか教えていただけますでしょうか。
近藤:1日目は、デザインってどんなものなんだろうかっていう話をしてそれを聞いてもらってました。まずは手で書かないとわかんないから、下手でもいいから書こうっていうことや、デザインをどう考えるか、みたいなことを伝えたりしました。その後に隣町やから知ってるかなというところもあって、例として「まちかど農園POSTO」を取り上げさせてもらって、この場所がどういう風にできたのかっていうところの話をしたりしました。
そして写真をいくつか見ながら、「デザインってどんなところがいいだろうか」っていうのを皆で考えました。例えばこの黒電話のいいところ・悪いとこはどこだろうとか。
ただ単にかっこいいではダメだし見た人を混乱させるようなものもダメなので、いいデザインっていうのは機能もいいし見た目もいい。それにどういう風に使ってほしいかっていうことも全部考えてあるよ、というようなことを伝えてました。
じゃあそういったことを踏まえて、実際にどうデザインしたらいいんだろう?っていう実践を2日目にしよう、っていうところで1日目は終わりましたね。
ーーなるほど。1日目は説明とかこちらから話すことが多かったと思うんですけど、その中で学生の方たちの意見や反応など印象に残ってることはありますか?
近藤:「まちかど農園POSTO」を知ってたから、これもやってるんだっていうのは驚いてたね。あとみんなすごく積極的で、結構いろんな意見が出てた印象があります。写真を見てどこがいいか・悪いかみたいなのは直感的にわかってたね。こういうのは逆に大人の方が分からなかったりするから面白いなと思いました。
2日目はDOORで実際に売ってるディアマンクッキーを使って、実際に考えて手を動かしてもらうワークショップみたいなことをやりました。
1日目の時にクッキーをみんなに渡して食べてもらって、綾菜にどういうことを考えて作ってるかっていう話をしてもらって。それで明日はこれのパッケージのデザインしてもらうから、これがどんな商品かってことをちょっとお家の方と話してきてって言って渡しました。
それで2日目にこのシートを渡して、どんな特徴があるかとか提供する価値などその場で書いていってもらいました。ストーリーとかもしっかり考えられててすごいなと思いましたね。それでこのシートを元にクッキーのパッケージデザインを描いてもらいました。
近藤:デザインもみんなしっかり考えてて、例えばこのデザインは表と裏があって片面は紙でもう片面は透明のppにしていて。シーンが夜だからクッキーをお月さんに見立てて裏背景も星空になってて、さらに裏返すとハートになっているとか考えてくれて。「勉強を応援する」っていうテーマでデザインしてくれた子は、ファミチキみたいに真ん中で切れるところがあって、ここに絵文字を描いてこれを切り取ったら、笑顔になるっていう発想を入れてて。あとこれもすごい良くて、「1つのアクセサリーのようにお洒落な気持ちになるような」っていうテーマで、ネックレスみたいになってるようなデザインを考えてくれました。みんなでデザインを考えた後は、作ったデザインを実際に社員の前で発表して好評してもらうっていうこともしました。
これだけのことを2時間でできるとは全く思ってなかったし、言い方はあれだけどもっともっとこうありきたりなものになるかなと思ってて。
けど意図もしっかりしてるし、デザインの表現もしっかりしてるから、これをみんなその場で2時間で考えてるからすごいなと素直に思いました。
ーー確かに2時間でこれだけしっかり考えられるのはすごいですね。どこからその発想が生まれるのか単純に気になりましたね。
「トライやる・ウィーク」振り返りと来年に向けて
ーー今回の取り組みを通じて、参加してくれた学生の方に何か変化があったと感じることはありましたでしょうか?
近藤:その2日間で変わったかどうかはわからないけど、絵がうまいとか才能があるからデザインができるっていうところから、やっぱり相手のことを考えるっていうことがデザインで重要だっていうことがわかったってことはみんな言ってたから、そういう考え方にはシフトしたんだろうなとは思ったね。
なんかあとは誇らしげやったなとはちょっと思ってね。実際にさっきみたいなデザインを発表して、プロから褒めてもらえて、誇らしげな感じはあったね。
ーー実際に手を動かしたり発表をしたりして、自信に繋がることが多かったのかもしれませんね。今回初めて「トライやる・ウイーク」を行ったと思うんですが、実際やってみてどうでしたでしょうか?
近藤:やってすごい良かったしみんなすごいなと思って、月並みな言い方やけど逆に教えてもらった感はあるね。デザインを教えてもらったというよりも若い吸収力ってこんなにあるんだとか、今の子ってこんなに優秀なんだなと感じたね。その当時の僕だったら同じように考えてるだろうかとか思ったり、すごくやってよかったなと個人的には思ってます。来年もあったら応募したいなと思ってます。今回僕の中では内容が結構良かったなと感じたから、来年またやるなら大きくは変えなくていいと思うけど、もう少ししっかり時間が取れたら本当はいいなと思うね。
できるかどうかは分からないけど、本来の5日間を取れたら取れたで、例えばどこか外に出て実際に見てきてもらうっていうのもしたいね。大学で6年間ソーシャルデザインを教えてたこともあって、社会課題を解決するデザインとは何かみたいなことを大学生に教えてて。その時に、例えばいいデザインはどこに隠れているだろうか、みたいなことをフィールドワークとかして実際に見て、「ここのこれがいいデザインです」とかっていうことをやってたのね。
ちょっと学校の規定で難しいかもわからんけど、本当はそういうところからやりたいな。
植物とか自然物以外で目に移るものって、必ず誰かが設計して必ず誰かがデザインしてる、どんなものでも電柱だってそうだし。その意図がどうあるかとかなんでこの形になってるんだろうとかって考えるだけでもすごく意味があるから、なんで道路ってこういう形してるんだろうとなんで二本線ここにあるんだろうとか、そういうのを一緒に考えてみたいね。